皐月賞回顧

戦前からハイレベルの混戦との予想がされていたが、事実近年ではかなりハイレベルの皐月賞だったと言える。
タイムは1分59.9秒。馬場がそこまで良くなかったことを考えれば悪いタイムではない。前半60.0ー後半59.9秒は正に均等なラップを刻んでいる。だが、今回は有力な先行馬が揃っていたことを考えれば、明らかな先行有利であった。後半の方が0.1秒速いことを考えれば、逃げたステキシンスケクンの逃げは速すぎず遅すぎず理想的。鞍乗藤田は役割を果たした。残念ながら距離がもたなかったということであろう。
勝ったメイショウサムソン鞍乗石橋の騎乗は見事。しっかりと好位につけ、長くいい脚を使い、勝負根性のある馬の特性を最大限生かした騎乗であった。高田もこれが久々のGⅠとは思えない騎乗だ。戦前の予想に反して中段より前につけた。中山のインコースは直線で開かないことも分かっていたのであろう。そして強力な先行勢がいる今回、後ろからの直線一気では届くわけがない。戦前の私の予想では、2枠を引いたことで、届くわけがないと自信をもっての切りだったのだが、馬の力を見誤ったというよりは高田の力量を見誤った。
だが問題は3着以下だ。中山2000mの特性上、しかもサムソン、リシャールといった強力な先行勢がいる今回、大外一気で差し馬が届くわけがない。しかもペースは速くなかった。明らかな凡騎乗を披露してしまったのは武豊だ。悪くないスタートを切ったものの、自ら位置を下げるという愚態。「普段ほど直線はじけなかった」とは本人の談だが、メンバーNo2の上がり34.8をジャンク、ドリパスと同じく出しているのだからはじけなかったもないもんだ。ジャンクは出遅れながらそれよりは前につけたものの、岩田は豊を気にしすぎた。仕掛けミスは本人も認めている通りだろう。だが、テン乗りの岩田が馬の特性を把握していなかったのも敗因の一つ。期待したサクラメガワンダーは痛恨の出遅れ。加えて豊の馬を気にしすぎた仕掛けミス。これも内田本人の談通り。
ダービーに向けてだが、勝ったメイショウサムソンは文句無しに候補の1頭だろう。平均ペースを流れに乗って自分から仕掛けてしのいだのだから価値がある。血統からも距離は問題なく、左回りにも不安はない。ムーンは血統からも馬体からも距離伸びてどうかが気がかり。メガワンダー、ジャンクはダービーに向けて視界が開けるレースだった。特にジャンク。この馬、少々ずぶいところがあり、仕掛けてすぐに伸びるタイプではない。それを岩田が把握した次回、距離伸びて間違いなくいいタイプだけに期待大だ。それより気になるのは二頭。京成杯からのぶっつけが不利とはいえ、流れに乗って伸びなかったジャリスコライト。完全なサウスポーと見る向きもあるが、元来この時期は無理をさせない藤澤厩舎。果たしてこれをステップにダービーに向けて完全に仕上げることができるか。強い調教を課さなければ、ダービーでも辛いレースを強いられるだろう。そしてリシャール。「仕掛けが早かったかも」とは本人談だが、差していい味が出るタイプではないのが過去2戦で分かっている。平均ペースだった今回、強気に行ったのは正解だろう。距離に限界が見えた。